あざみの歌

倍賞千恵子は、派手ではないけれど、まじめにつつましくこつこつと日々を暮らしている女性を演じさせたら日本一といってもよい女優です。映画『下町の太陽』『男はつらいよ』『幸福の黄色いハンカチ』など、平凡でありながら芯の強いまじめひとすじの女性を演じています。

彼女は松竹音楽舞踊学校を首席で卒業し松竹歌劇団に進んだ、いわばエリートで、踊りも歌も基礎がしっかりとしています。昔のことなので映画で言えば大物女優のような位置にいると思いますが、決して自分をひけらかすようなことがなく、堅実そのものの生き方をしているようです。そんな人柄と表現力で歌の雰囲気をそのまま上手に表現できる歌手です。わたしの大好きな庶民派の女優であり歌手です。

そんな彼女にぴったりの曲が『さくら貝の歌』だと思っています。そして、それとこの『あざみの歌』も彼女自身をあらわすような歌だと思っています。彼女に歌わせると、しっとりとして一段とすばらしく聞こえてきます。『あざみの歌』はもともと伊藤久男が歌ってヒットした歌で、倍賞千恵子の持ち歌ではないけれども、たおやかな女性の声のほうがぴったりとすると思っています。

この曲は終戦後まもなく作られました。戦後の混乱期なのでまだレコード業界などというものもしっかりとしていなかったころでしょう。そんななかで詩作をしていた横井弘の詞と戦前から作曲をしていた八洲秀章の曲がいっしょになって名曲となったようです。その詳しいようすについては以下のページに説明されています。

http://www.geocities.jp/marucyann1/azaminoutahiwa.html

アザミというと野の花であり、昔はどこにでも咲いている花でした。百合の花などが高貴とな花とされるのにくらべて、平凡で普通の花という印象があります。アザミの濃い紫色とチクチクするとげは、平凡な花と思わせるにはやや特徴がありすぎですが、わたしはこの歌を知っているからよけいにアザミの姿が庶民的と感じるのだと思います。

あざみの花
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この歌はよく聞くのですが、歌詞をじっくりと味わったことはなく、わたしには「山には山の愁いあり 海には海のかなしみや」ばかりが印象にあります。歌詞の内容はあまり知りませんでした。ほのかな恋心を歌っているようですが、わたしは、「愁い」とか「かなしさ」を人生の哀しさに重ね合わせて聞いています。

流れるようなゆったりとしたメロディを聞くたびに、素朴につつましく生きることがそれなりに豊かな叙情性をもちすばらしいことだと実感します。

http://www.youtube.com/watch?v=DW4upkF_aBY

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