エーゲ海の真珠

わたしの少年時代から青春時代にかけては、イージー・リスニングが全盛期でした。記憶は不確かなのですが、早いうちにはパーシー・フェイスやフランク・プールセルなどの楽団が、少し遅れてフランシス・レイやレイモン・ルフェーブル、ポール・モーリアなどの楽団が数々のヒット曲を出したように覚えています。

イージー・リスニングはことばどおり、気軽に聴く音楽といった意味で、主にオーケストラが美しい音色や親しみやすいメロディを演奏して、一世を風靡しました。ただし、必ずしもオーケストラばかりでなく、以前に挙げたギターのクロード・チアリなどもこの分野に入れられることもあるようで、はっきりとした定義があったわけではないようです。

そんななかでフランスのポール・モーリアは、イージー・リスニングといえばこの名が浮かぶほどで、イージー・リスニングの代表ととらえてよいと思います。数々のヒット曲を発表していて、特に日本では人気が高かったようです。

そのポール・モーリアの代表曲の1つがこの『エーゲ海の真珠』です。昭和45年(1970年)の発表のようで、当時のコマーシャル曲に使われたほか、現在でもテレビのさまざまな場面でBGMとして用いられています。

最初のうねるようなトランペットの前奏にバタバタとかすかに入ってくるリズムがじんわりと耳に入ってきますし、つづくピアノの音とフルートのような音の組み合わせも耳になじみます。そして、そのあとからたたみ込むように勢いを増して迫ってくる音としっとりと落ち着いたスキャットのバランスがすてきです。聴かせどころに満ちた曲づくりと言えるでしょう。

ところで、この曲の原題は『Penelope “L'eternel Retour”』で、直訳すると「ペネロペ 永劫回帰」ということのようです。ペネロペは、ギリシア神話に出てくるオデュッセウスの妻で、貞淑の象徴とされるそうです。一方、永劫回帰はニーチェの哲学で語られる思想です。どうして:こんな原題が付けられたか意味不明ですが、原題とまったく異なる邦題のほうがずっとすてきで取っつきやすい題名です。明るいおだやかな海を連想させるエーゲ海と美しく輝く真珠、ぴったりですね。

https://www.youtube.com/watch?v=IqfjmiUgONc

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